男性の薄毛、抜け毛の原因は?

男性の30%前後は20〜30代の青壮年期から異常に脱毛が増えて、額や頭頂部の髪が地肌が目立つほどに薄くなります。

 

このような「若はげ」はもちろん老化現象ではないし、男性特有の症状でもあるので、昔から「男性ホルモンの影響」と言われてきました。

 

この薄毛と男性ホルモンの関係は近年になって医学的に明らかにされ、治療の道が開けてきました。

 

そこで判明したのは、男性ホルモン(テストテロン)が直接脱毛の原因になるのではなく、5αリダクターゼという酵素のはたらきでDHTという物質に変換されたときにだけ薄毛の原因になるということです。

 

男性の薄毛・抜け毛の原因

 

 

悪玉男性ホルモンDHTと男性型脱毛症AGAの関係

毛髪は通常は4~5年の寿命がありますが、女性ホルモン(エストロゲン)はこの寿命を延ばす作用があり、男性ホルモンは縮める作用があります。その結果平均すると男性の髪は3~5年、女性の髪は4~6年の寿命といわれています。

 

ただし男性ホルモン(テストテロン)はそれ自体が髪の寿命を縮めるわけではありません。

 

テストテロンがDHTという男性ホルモンに変換されると、毛髪サイクルの成長期がいっきょに短縮されて、太く長く育つ前に脱毛してしまうのです。

 

このためDHT(ジヒドロテストテロン)は悪玉男性ホルモンなどと呼ばれています。

 

テストテロンがDHTに変換されるのは、5αリダクターゼという酵素のはたらきです。

 

テストテロンが5αリダクターゼによってDHTに変換され、DHTがヘアサイクルを狂わして脱毛が進行するのがAGA(男性型脱毛症)です。

 

現在日本でAGAの悩みを持つ男性は一千万人を超えると言われています。AGAで脱毛した地肌には太く長い毛髪が徐々に少なくなって、か細く短い毛髪が増えてきます。

 

女性の薄毛はエストロゲンの分泌が減る更年期以降に進行することがほとんどですが、男性ホルモンが関係しているAGAはそれよりはるかに早く発症します。

 

十代の思春期から脱毛が増えるケースもまれにあります。

 

なぜ男性ホルモンがDHTに変化するのか(DHTの役割)

男性ホルモンのテストステロンは5αリアクターゼという酵素の還元作用でDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、このDHTが毛髪の成長を抑制して脱毛をひき起こします。

 

このようにAGAの原因になるという意味ではDHTはまさに悪玉男性ホルモンなのですが、人の身体に不必要なものはないはずで、悪さばかりをする物質が作られることもないはずです。

 

なぜ5αリアクターゼという酵素が存在して、テストテロンはDHTに変換されなければならないのでしょうか。

 

そのメカニズムが完全に解明されたわけではありませんが、男性器の形成にはこのプロセスが必要だと考えられています。

 

テストテロンは分泌されていても5αリアクターゼが欠乏している男性はDHTが産生されず、男性器の正常な発達が見られません。

 

しかし、20歳を過ぎたころには男性器の形成もすんでいるので、まだ作られ続けているDHTは悪玉と言われてもしかたありません。

 

そもそも男性器の形成に関係するホルモンがなぜ毛髪の成長を阻害してしまうのかということがよく分かりません。

 

DHTと毛髪の関係はまだまだ究明されなければいけないことがありますが、薄毛が病院の治療科目になったのは「テストテロン+5αリアクターゼ→DHT」という関係が分ってきて、DHTの産生を抑える有効な薬が開発されたからなのです。

 

AGAは何歳くらいから始まるのか

日本でAGAを発症している人の数は一千万人くらいと言われていまが、年代別の発症率は次のようになっています。

 

・20代  6%
・30代 12%
・40代 32%
・50代 44%
・60代 51%
・70代 61%

AGAの原因は男性ホルモンの1種のDHTなので、その分泌・産生が活発になる13歳くらいからAGAが発症しても不思議はありません。

 

事実高校生くらいからその兆候が現れる場合もまれにありますが、薄毛を実感するほど進行することはほとんどありません。

 

20代では100人に6人が、脱毛の進行と薄毛の兆候を自覚しています。

 

これが30代になると10人に1人、40代では3人に1人と増えていき、60代になると男性の半数は薄毛の症状がでています。

 

60代の数字だけ見るとAGAは1種の老化現象とも受け取れますが、白内障などの老人性の病気と違うのは、きわめて若い年齢からかなりのパーセンテージで発症しているということです。

 

身体のどこにも老化現象などが現れていない20代、30代の男性の髪の脱毛が進むのは、DHTが髪の成長サイクルを狂わせて、数年かけて太く、長く成長するはずの髪に脱毛サインを出してしまうからです。

 

AGAの初期症状には次のようなものがあります。

 

髪が柔らかくなった感じがする

 

シャンプーのときや枕カバーに着く抜け毛が異常に多くなる。

 

頭頂部やひたいの髪が細くなったように見える。

 

このような症状が出だしてしばらくすると、頭頂部の地肌が透けて見える、額の生え際が後退しておでこが広くなるなどの本格的なAGAの兆候が現れてきます。

 

髪が薄くなる人と薄くならない人がいるのはなぜ?

髪が薄くなる人と薄くならない人の違いは?

男性がAGAになるかならないかは、基本的には遺伝子によって決定されています。

 

AGAになりやすい人は、遺伝学的にいうと「X染色体にあるAR遺伝子のCAG配列反復が少ない人」です。

 

このCAGという塩基は平均22回反復(リピート)配列されていますが、人によって16回〜32回リピートまで非常に個人差があります。

 

そして、このリピート数が少ない人ほど男性ホルモン受容体の感受性が高く、テストテロンが5αリダクターゼによってDHTに変換されやすいのです。

 

難しい話になってしまいましたが、要するに男性には脱毛の原因になるDHTができやすい人とできにくい人が遺伝的に決まっているということです。

 

AGAになりやすい人にとってはたいへん損な話で親を恨みたくもなりますが、1つだけなぐさめになることがあります。

 

それは、フィナステリドという脱毛防止の薬が効きやすいということです。

 

AGAになりやすい人は男性ホルモン還元酵素の5αリダクターゼが良く作用する人です。

 

したがってこの酵素の働きを阻害するフィナステリドを服用することによって、効果的に脱毛を予防することができるのです。

 

脱毛の原因には遺伝の他に生活習慣なども関係してきますが、主な原因がDHTの過剰にある人ほどフィナステリドの服用効果は高くなります。

 

AGAは頭のどの部分から薄くなるのか

AGAはよく知られているように

 

1.頭頂部から薄くなっていくタイプ
2.額の生え際から薄くなっていくタイプ
3.頭頂部と額の両方から薄くなっていくタイプ

 

の3つのタイプがあります。かなり薄毛が進行しているAGAの場合でも側頭部や後頭部の髪にはまったく症状が出ないのがAGAの特徴です。

 

なぜ頭頂部と額の生え際から薄くなりだすのでしょうか?

それはこの部分に男性ホルモンを悪玉男性ホルモン(DHT)に変換する酵素の5αリダクターゼU型が多く存在しているからです。

 

なぜこの部分にだけ5αリダクターゼが多いかは分っていませんが、この酵素があることによってDHTがとくにこの部分で多く産生されて、それが毛髪の成長期を短くしていると考えられています。

 

髪の成長期が短縮されて育たないうちに脱毛するのがAGAですが、脱毛した後には同じ毛穴からまた毛が生えてきます。

 

しかしその毛が育たないうちにまた抜けてしまうので、頭頂部には産毛のようなか細く短い毛が増えてきます。これがだんだん地肌が目立ってくる原因です。

 

まったく毛が生えていないように見える頭皮にもよく見ると直径30ミクロン以下の細い毛が生えています。

 

これが直径80ミクロンくらいの健康な毛髪に育つ前に抜けてしまうのがAGAなのです。

 

男性ホルモン以外の抜け毛を促進する原因は?

男性が比較的若い年齢から頭頂部や額の生え際が薄くなってくる症状は、男性ホルモンのDHTが関係しているAGA(男性型脱毛症)です。

 

したがってAGAの治療はDHT対策が中心になりますが、「髪も身の内」でそれ以外の健康状態、生活習慣、病気などの影響ももちろん受けます。

 

男性ホルモン以外でもっとも影響が大きいのが、毛根へ栄養を供給する「血液循環」です。

 

血行を阻害したり、血管の老化を促進する生活習慣は、長い目で見るとすべて薄毛の原因ということができます。

 

タバコを吸ってニコチンが体内に吸収されると皮膚の毛細血管が瞬時に収縮して血行が悪くなり、皮膚の表面温度が下がります。

 

タバコを吸っても薄毛にならない人もいますが、薄毛が進行しつつある人はやはり禁煙することが望ましいのです。

 

ストレスも同じように毛細血管を収縮させて毛髪にわるい影響を与えます。

 

案外気づかずに頭皮にダメージを与えているのが、シャンプーのしすぎで頭皮の角質をはがしすぎたり、頭皮を乾燥させていることです。

 

毛穴の皮脂を取ろうとして乱暴にシャンプーするのも生えかけの細い毛髪にダメージを与えます。

 

また中高年からは、高血圧、高血糖値、高コレステロールの三大生活習慣病が動脈硬化を促進して、毛細血管へのスムーズな血行を阻害します。

 
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