肥満タイプに合わせた適切なダイエット法
南太平洋のサモア島では人口の80%以上が肥満体だと言われます。これには食習慣だけでなく遺伝子的な要因があると考えられています。肥満の遺伝子的研究は近年急速に進んで、エネルギー代謝に関わる遺伝子、いわゆる肥満遺伝子は現在までに50種類ほど確認されています。
肥満遺伝子は、人間が進化の過程で経験した飢餓体験を乗り越えるために獲得した遺伝子の変異と考えられるので、「倹約遺伝子」つまりエネルギー消費を節約する遺伝子とも呼ばれています。
肥満遺伝子はその倹約の仕方のタイプによって、りんご型(β3AR)」「洋なし型(UCP1)」「バナナ型(β2AR)」の3つに分けることができます。したがってダイエットも、自分がどのタイプの節約遺伝子を持っているかを見きわめたうえで行なうのが効果的です。
自分がどの遺伝子を持っているかは、遺伝子検査を行っている病院で調べてもらうこともできるし、「遺伝子検査キット」なども市販されています。しかし遺伝子を調べなくても、太り方(リンゴ型か洋ナシ型か)とふだんの食生活を考えあわせると見当がつきます。
リンゴ型肥満の遺伝子を持つ人のダイエット法
おへそ周りのサイズが増えるリンゴ型肥満になりやすいのはβ3ARという遺伝子をもっている人です。このタイプは日本人にはいちばん多く、34%がこの遺伝子を持っているといいます。
この遺伝子を持っている人は、もっていない人より基礎代謝が1日200?少なくなります。つまりカロリー消費を倹約する体質です。200?というと、ご飯なら茶碗に軽く1杯、バナナなら2本分のカロリーです。
このタイプの人は良く言えば糖分を内臓脂肪として蓄える能力がある人ですが、悪く言うと、甘いものや炭水化物を食べすぎるとすぐ太っちゃう人です。それもお腹まわりが太る内臓脂肪型の肥満です。
このタイプに適したダイエットは炭水化物を減らすダイエットです。有酸素運動を取り入れるとより効果的に内臓脂肪を減らすことができます。
糖質や炭水化物による血糖値の上昇をなるべく抑えることが大切です。そのため、食べる順番を工夫する(野菜、タンパク質系から食べ始め、ごはんや麺類など炭水化物を最後に食べる、または炭水化物や糖質の摂取量も控えめにする)のも大切です。
洋なし型肥満の遺伝子を持つ人のダイエット法
内臓脂肪ではなく皮下脂肪がつきやすいのが洋ナシ型遺伝子(UCP1)を持つ人で、日本人の約25パーセントがこのタイプです。太り方で言うと、太ももやお尻などの下半身に脂肪がつく、女性に多い太り方です。一説によると寒い地方の人に多い、皮下脂肪を効率的にためるための遺伝子だといいます。
逆に言うと脂肪を燃焼させることが下手な体質なので、ダイエット法としてはカロリー消費のための運動というよりは、足腰に筋肉をつけて基礎代謝を高め脂肪を燃焼させや良い身体づくりが必要です。
このタイプの人は脂肪分の多い食物を好む傾向があるので、炭水化物の摂りすぎに注意するとともに脂肪分の摂りすぎにも注意し、タンパク質を多く摂るように心がけましょう。
バナナ型肥満遺伝子を持つ人のダイエット法
バナナ型肥満というのはあまり聞き覚えがないかもしれませんが、β2ARという遺伝子を持つ人がなりやすい肥満で、日本人の約16%がこのタイプです。このタイプは逆にこの遺伝子を持っていない人より基礎代謝が1日200?ほど多いので、ほんとうは肥満遺伝子というより、やせ遺伝子です。
しかし問題はこのタイプの人はいったん太ってしまうとなかなかやせられないということです。あまり太ったことはないし食べても太らない、といううらやましいような遺伝子を持っているのですが、しかし限度を超えて食べるとやはり太ります。100kgオーバーなどという超肥満になるのはこのタイプの人が多いとも言われます。
バナナ型肥満の人に適したダイエット法は、低脂肪で高タンパク質の食事と筋力トレーニングです。