ニコチンをまったく使わない禁煙法
禁煙サポート薬というとニコチンガムや皮膚に貼るニコチンパッチを思い浮かべる人が多いと思いますが、いま禁煙外来ではこういう「ニコチン置換法」を使用した禁煙指導をしている所はほとんどありません。
ニコチン置換法は、タバコ以外の手段で少量のニコチンを摂取して禁煙の離脱症状(禁断症状)を緩和しようという方法ですが、ニコチン依存症をニコチンを使って治すという発想にはやはり矛盾があります。タバコは止めたけどニコチンガムが止められなくなったという別の依存を生むリスクもあります。
いま禁煙外来で主流になっている禁煙補助薬は、ニコチンをまったく含まない「チャンピックス」(成分名はバレニクリン酒石酸塩)という薬です。この薬には
@ 脳のニコチン受容体をブロックするので、タバコを吸っても美味しく感じない
A ニコチン受容体を刺激して少量のドーパミンを放出させ、ニコチンへの欲求を弱める
という作用があります。
タバコを吸っても美味しく感じないのがミソ
チャンピックスは2006年にアメリカで承認され、日本では2008年に承認されたばかりの新しい薬です。タバコを吸っても美味しく感じなくなるのというのがミソで、禁煙成功率はニコチン置換法よりかなり良いようです。
チャンピックスは、最初の3日間は以前のようにタバコを吸いながら服用し、続く4日間は本数を減らして服用します。4〜5日目からはタバコを吸っても以前よりは美味しく感じなくなります。このように、第1週でタバコはそんなに美味しいものではないという記憶を作っておいて、第2週目から完全に禁煙し、12週間薬を服用します。禁煙1カ月目くらいに一時的にニコチンへの誘惑が強くなることがありますが、それをクリアすると1日1日禁煙成功に近づきます。
禁煙外来でニコチン依存症と診断されると健康保険でチャンピックスを処方してもらえます。ただし、前回の受診(初診)から1年以内にまた受診する場合は自由診療となり健康保険は適用されません。