ピルの成分は?

ピルの成分

ピルの成分は?

 

ピルには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲストーゲン)の2種類の女性ホルモンが配合されています。女性は毎月、排卵と月経をくり返しますが、それをコントロールしているのがこの2つの女性ホルモンです。

 

月経の後は卵胞ホルモンの分泌が増えて、子宮内膜を充実させるとともに排卵の準備が進みます(卵胞期)。排卵の後は黄体ホルモンの分泌が増えて、受精卵を子宮内膜に着床させる準備が進みます(黄体期)。この時期に卵子が受精して、子宮内膜に着床したら妊娠が成立します。

 

妊娠しなかったときは、卵胞ホルモンも黄体ホルモンの分泌が激減して、子宮内膜が剥落し月経がはじまります。

 

これらの生理作用のいわばゴー・ストップサインを出すのが女性ホルモンの働きですが、ピルは女性ホルモンを服用することで自然のホルモンバランスに変化を与えて妊娠を防ぐ働きをします。

 


 

どうしてピルを飲むと避妊できるの?

女性は卵胞ホルモンの分泌が増える排卵前の低体温期と、黄体ホルモンの分泌が増える排卵後の高体温期が「生理周期」を形づくっています。それによって毎月排卵がおきて、子宮内膜が育ち、新たな妊娠の準備態勢が作られているのです。

 

しかし、妊娠するとこの2つの女性ホルモンは常に一定量が安定して分泌されるようになります。ピルを服用して卵胞ホルモンと黄体ホルモンを補給していると、ホルモンバランスが「妊娠した状態」に近くなります。この疑似妊娠によって卵巣や子宮が「妊娠中」のサインを出すので実際の妊娠を防ぐことができます。

 

具体的には、ピルを服用すると身体に次のような変化が起こり、妊娠しなくなります。

 

排卵が休止する
精子が子宮頸管を通りにくくなる
受精卵が子宮内膜に着床しにくくなる

 

これらはいずれも妊娠のサインによっておきた身体の変化です。このうち1つでもあれば妊娠は成立しませんが、ピルはいわば二重、三重の関所で妊娠を防いでいることになります。

 

日本は外国に比べてピルはあまり普及していないと言われるのは何故?

ピル(経口避妊薬)は1960年にアメリカで初めて承認されました。1973年に副作用の少ない低用量ピルが開発されてからは欧米を中心に世界中の女性に使用されるようになりました。

 

しかし日本では避妊薬として低用量ピルが認可されたのはアメリカに遅れること約40年の1999年でした。1990年に認可が申請されてから9年という異例の長期審議を経ての「解禁」でした。認可された1999年当時、国連加盟国で未承認だったのは日本だけというありさまでした。

 

日本がピルの解禁に慎重だった理由はいろいろあるようですが、その中の1つがコンドームの使用率の低下によってエイズ(HIV)の感染者が増えるのではないかという意見です。

 

そんなわけで日本ではピルが解禁になってからまだ十数年の歴史しかなく、50年以上の使用実績がある欧米に比べると一般の理解や知識もまだ充分ではありません。ピルに対する誤解や偏見も根強く残っているようです。

 

低用量ピルとは何ですか?

低用量ピルとは成分の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合量をできるだけ少なくした、ピル(経口避妊薬)です。低用量ピルは従来の中・高用量ピルにあった、吐き気などの「つわり」に似た症状、手足のむくみ、体重の増加などの副作用が少なくなっています。

 

現在は経口避妊薬は低用量ピルが主流で、中・高用量ピルは緊急避妊用のアフターピルや月経困難症の治療などに使われています。

 

低用量ピルは成分の配合量が少なくても正しく飲めばほぼ100%の避妊効果があります。月経周期に合わせて3週間毎日服用し、1週間服用を休むのが基本です。
低用量ピルには毎日同じ配合成分の薬を飲む「一相性ピル」と月経周期によってホルモンの配合量が違う薬を飲む段階型ピル(「二相性ピル」と「三相性ピル」)があります。

 

低用量ピルには「28錠タイプ」と「21錠タイプ」がありますが、その違いは服用を休止する1週間に飲む「偽薬(プラセボ)」がセットされているかいないかということです。

 

なお、日本では低用量ピルも一般の薬局では販売されておらず、医師に処方してもらうか、個人輸入通販であれば個人の使用に限り「処方箋なし」でもピルを購入できます。

 

ピルについてのよくある誤解や偏見とは

日本で低用量ピルが承認されたのは1999年で、諸外国に比べて使用歴が浅く、ピルに対する誤解や偏見もまだあるようです。なかでもよく見聞きするのは次のような誤解です。

 

ピルを飲むとがんになる

 

女性ホルモン剤を長年にわたって服用すると乳がんのリスクが高まると指摘されていましたが、低用量ピルではそのリスクはほとんどありません。逆に低用量ピルの服用で卵巣がん、子宮体がん、大腸がんのリスクが明らかに減少することが分っています。

 

ピルを飲むと卵巣に休み癖がついて不妊症になる

 

これはまったく根拠のない誤解で、むしろピルを飲むことで生理不順が治ったり、卵巣機能が改善したりと、将来の妊娠のために役立つことが多いのです。もちろんピルの服用を中止すると2ヵ月くらいで排卵は再開します。

 

ピルを飲むと太る

 

ピル自体が肥満の原因になることはありません。ピルの飲み始めに見られる顔のむくみを太ったと誤解している場合もあるようですが、これは飲み慣れると解消します。

 

ただしピルを飲むと身体が疑似妊娠状態になるので「食欲が増進する」ということはあるようです。ピルを飲むようになってからお腹がすくようになったという場合は、食欲に任せて食べる量を増やさないように注意する必要があります。

 
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